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麗加の家・下野まちさんぽ

下野市下古山 柏崎酒店 柏崎 孝 さん

昔懐かしの不思議空間蓄音機から流れるメロディは明治・大正時代の日本が、まさに世界に互して歩みはじめた頃の哀愁と高揚感に満ちている

商店の庭先からは、地元かかし祭りに参列した作品の数々がお出迎え

古山小学校前の通りを西に走ると、程なく目に入ってくるタイル貼りの建物。それが柏崎酒店だ。商店と自宅を囲む庭のまわりには、地元でもすっかり定着しつつあるかかし祭りの作品があちらこちらに置かれ、行く人の目を楽しませてくれる。

酒店のご主人、柏崎 孝さんは本来の酒店に加え、趣味で始めたSPレコード盤の収集・骨董品の販売なども手がけ、店内はレトロな雰囲気に包まれている。

地域の町おこしなどにおいて柏崎さんの知恵と企画に勇気づけられた人は多い。その人達から"一度お会いしてごらん?"と背中を押され… 私たちは柏崎宅を訪れた。

  • 上:古山小徒歩5~6分。まるでトトロの世界に迷い込んだようなポストが目に入る。でもこれは本物。昔から使われてるものらしく、骨董品と見分けがつかない… 
  • 左:公道に面して2匹のなまはげが道行く人の目を奪う。今は少し日に焼けてしまったが、2年前のかかし祭りで優勝した柏崎さんの作品である。2Fには仮面ライダー。かかし祭り初年度の出品作である。これらのかかし見たさに訪れる人もいるそう。


所有するレコード盤は3千枚以上。蓄音機や古いオーディオ類が店内の至るところに並ぶ。

20台以上ある蓄音機のなかで、最も古いものは大正時代のもの。数あるレコードの中には、現在の天皇陛下のお誕生を祝った貴重なレコードも置かれている。

試しに聞かせてもらったレコード盤の音は、柔らかい深みと力強い響きを持ち、昔映画館で聴いた音そのものである。

この蓄音機でこの音を流して欲しいという愛好者達の依頼を受け、レストランや広場、お寺などで何度も音楽会を開いたという。
また、この音を求めて店を尋ねるお客さんもいるという。

かかし祭り
  • 上:天皇陛下の誕生レコードは、新聞でも話題に。現在このレコードを持っている人は日本に何人いるだろう?貴重な文化財的価値を持つ品である。

ところ狭しと並ぶ味わいあるオーディオ類たち。

ものは古くてもきちんと音が出る。

他にも探究心をくすぐるような珍しい骨董があちらこちらに。左は今から84年前、昭和4年製造のアメリカ製柱時計。右は日本EIKOSHA製の柱時計。

御神輿づくりにかかし祭り… 
アイディアと創作力が生み出した柏崎さんの傑作たち。

皆様はこの下古山の御神輿をご覧になられただろうか?『下古山の御神輿は立派なんだ』と言う声を私は何度か耳にしたことがある。

今年の夏祭りの当日、私はその立派な御神輿に見とれていた。重々しく黒光りする大きな屋根。その頂きを飾る金色の鳳凰。四隅に垂れ下がる豊かな紺色の房と太い担ぎ棒。
沢山の担ぎ手さんの白足袋が一糸乱れずゆっくりと歩みを合わせ、かけ声と共に御神輿を進めていく。 その足元を旗を立てながらじっと睨んでいる長老の厳しい表情。
あまりの格好良さに涙ぐんでしまった程だ。

何も知らなかったが、この御神輿はそういう経緯を経て今下古山の若者達に担がれているのだ…

いいお話が聞けたと私は心から柏崎さんに感謝した。

  • 右:祭り以外は下古山の公民館に格納されているが、ガラス窓越しに御輿を見ることが出来る。飾りの真鍮の模様、四隅に据えられた虎の木彫り…これは仲間達が皆で彫り上げた。 細部の至る所まですべて手作りである。この御神輿に真鍮だけで20kgが使われている。

今回の取材で驚いたのは、この下古山地区の御神輿について。
御神輿の購入予算が厳しかった30年前、数名の青年達が下古山に御神輿が欲しいと柏崎さん宅を訪ねて来た。
専門家に頼めば2〜3千万はするという。
そんな大金を捻出するあてはない。『じゃあ、御輿を作っちゃえ』ということで、柏崎さん含む3人程のメンバーを筆頭に、毎晩寝る間を惜しんでの約3年の歳月をかけて… 念願の御輿が下古山に誕生したのである。 思入れのある御神輿の写真は、店内に飾られている。どの部分をとっても、血のにじむような努力と工夫と沢山の人達の暖かい友情と支援と技術提供のもとに出来上がったもの。

まさにエコ!?ペットボトル3千個使用の御輿も制作。

  • 姿川沿いに広がる広い田んぼと澄んだ青空を映して鎮座する下古山のクリスタル御輿。

こちらの御輿、やはり柏崎さんの作品だが、素材はほぼペットボトルのみ。しかも中に照明を組込み、ライトアップも可能。制作は3ヵ月を投じ、使用したペットボトルは三千個以上。 高さも3m60cmあるという立派なもの。

この御輿が話題となり、TBSや地元テレビの取材もあった程。TBSの取材の時は、水道橋博士や数人のタレント達が繰り出し、それはそれは賑やかなひと時であったとか。この人気者は人々にクリスタル御輿と呼ばれ、今下古山公民館に鎮座してお呼びをかかるのを待っている。

また、前回の連載でも紹介した、星宮神社のかかし祭り。じつはこのアイディアも柏崎さん達の立案。氏神様である星宮神社をもりあげるべく地域のメンバーと企画した。 いまではすっかりシンボル的存在となったトトロのかかしは、この柏崎さん達のグループによる手作り作品なのである。

  • 上:今年のかかし祭り作品。使う素材はペットボトルや干瓢、ひょうたんなど素朴で身近な素材が多い。
  • 左:かかし祭り当初から2代目のトトロ。すっかり神社のシンボル的存在になった。
  • 上:姿川沿いに広がる広い田んぼ。その先に男体山が見える。この道を通ってかかし祭り会場へ。
  • 下:こども達もかかし祭りに参加。来年はもっと大きなかかしを作ろうね!
  • H24年度優勝作品。干瓢を高々と空にかざした若妻の姿が美しい。石橋町農協婦人部作。

工夫とアイディア。コミカルさと哀愁。様々なかかし作品をご紹介!

商店の二階から見下ろしているのは柏崎さんのかかし祭り第一回目の作品。

マニアもうなる、ガンダムかかし。ほぼペットボトルで作成。

巨大スイカにカブト虫とトンボが…!こちらもかかし作品。

柏崎さん作、H22年の優勝作品。この素敵な表情!深い人間へのまなざしがこの作品を生み出している。

柏崎さん作、H23年の作品。「なまはげ」。ぎょっとして立ちすくむこども達も…。(でも、これは本物の鬼じゃないよ、かかしだよ!)

かかし…ではないが、これも干瓢とひょうたんを組み合わせた柏崎さんの干支作品。

最後に、"何をしている時が一番楽しいですか?"という質問に柏崎さんは、
「酒飲んでるときだな」とぶっきらぼうに言った。

人類は約20万年もの時を営々と生き続けてきた。愛し、涙し、こらえ… 殺し合い、奪い合い… みんな自分の大切なものを守るための戦いであったはずだ。 その中で人間はより良く生きる為に便利なもの、必要なもの、美しいもの、気高いものを生み出していった。 その価値と尊さを知る故に柏崎さんは心の琴線に触れたこれらのものを集めていったに違いない。


ほこりをかぶったまま鎮座している木彫りの人形。
 積み重なっている古いレコード盤。
 45年前のビートルズの稀有なポスター。
 日本で最初に作られた足踏みミシン。

雑多に置かれたそれらの品が、ほの明りの部屋で哀愁をもって私たちに迫って来た。
ハイテク文明が瞬きする間もなく目の前を通り抜けていく現代。その中で、骨董が語りかけている何かに耳を傾け、柏崎さんは確固たる何かを持って生きている。それをお聞きしたかったが、恐れ多くて言い出せなかった。


外へ出ると、太陽は燃えるような熱気をたぎらせて地上を照りつけていた。その暑さが何故か快くー 私たちは静かな骨董の空間を後にしたのである。

逸品、珍品、作品。柏崎商店の骨董品の数々をご紹介。

昭和33〜34年頃。東映で五話しか撮影しなかった白黒の月光仮面のフィルムをビデオテープにしたもの

柏崎さん手作りのラッパ。
素材は紙と竹。これを蓄音機に取付けることによって音は何倍にも増幅するという。

レコード音を増幅させる為のアンプ。
木と布を使った柏崎さんの素敵なデザインである。

今日は何の用事かね?玄関には小さなトトロがお出迎え。干瓢で作ったという!

玄関の隅に渋い存在感で置かれている年代不詳の蓄音機。このふたを開けてレコードと針をセットし、レコードを回す。流れる曲は…?

見ざる聞かざる、言わざる… あれ?一匹逃げ出してしまった!

最近の作。油圧計を時計として改良した珍品。文字盤は油圧計だが針は正確に日本の今の時間を指している。(誤差は一切なし)

45年前のビートルズのポスター。

1899年製(126年前!)のセイコー社製目覚まし時計。

古い柱時計の内部(真鍮製)を取出して現代の時計として蘇らせたオブジェ。

FUJIJANOMEの名が刻み込まれている。明治?おそらく日本で最も古い足踏みミシンを花台として改良。

柏崎さん手作りのお面の数々。これも干瓢などの素材を利用して作られたもの。

神社の情報

■ 柏崎酒店

所在地 栃木県下野市下古山906
お問合せ先 0285-53-1919
営業日 不定休

物言わない骨董が語りかけてくる時がある…。
そのことについて私はお聞きすることが出来なかった…。

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